公的年金の全体像
年金制度には、強制加入の公的年金と、任意加入の私的年金がある。
日本の公的年金制度は、国民年金を基礎年金とした2階建ての構造になっている。
1階は20歳以上60歳未満の全ての人が加入する国民年金、2階は会社員などが加入する厚生年金になっている。
| 2階 | 国民年金基金 | 厚生年金 | – |
| 1階 | 国民年金(基礎年金) | ||
| 対象者 | 自営業者や学生など 第1号被保険者 |
会社員や公務員など 第2号被保険者 | 会社員や公務員の妻など 第3号被保険者 |
例えば、会社員の場合、国民年金と厚生年金の両方から給付を受けることができる。
公的年金の給付には、次のようなものがある。
| 給付内容 | 国民年金 | 厚生年金 |
|---|---|---|
| 老齢給付 | 老齢基礎年金 | 老齢厚生年金 |
| 障害給付 | 障害基礎年金(1級、2級) | 障害厚生年金(1級~3級)、障害手当金 |
| 遺族給付 | 遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金 | 遺族厚生年金 |
老齢給付は、ある年齢に達した場合に、引退後の生活支援のために支給される年金のこと。
障害給付は、障害を負った場合に、生活支援のために支給される年金のこと。
遺族給付は、被保険者が死亡した場合、遺族の生活保障のために支給される年金のこと。
国民年金の被保険者
国民年金の被保険者は、次のようなものがある。
| 第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 第3号被保険者 | |
|---|---|---|---|
| 対象者 | 自営業者、学生、無職の人 | 会社員や公務員(厚生年金や共済年金の加入者) | 第2号被保険者の被扶養配偶者 |
| 年齢 | 20歳以上60歳未満 | なし | 20歳以上60歳未満 |
| 国内居住要件 | あり | なし | なし |
第2号被保険者は、老齢年金の受給権者となった場合、第2号被保険者の資格を失う。
国民年金の被保険者に国籍要件はない。一定の条件を満たせば、外国籍の人も国民年金に加入できる。
国民年金の任意加入被保険者
国民年金は加入義務がないけれど、任意で加入する任意加入被保険者もある。
次の要件を満たす人は、国民年金の任意加入被保険者になることができるよ。
- 国内に住所がある60歳以上65歳未満の人
- 国内に住所がある20歳以上60歳未満の人で、厚生年金の老齢給付を受けることができる人
- 日本国籍を有する人で、国内に住所がない20歳以上65歳未満の人
任意加入は必須ではなく、あくまで個人の選択になる。任意加入の手続きは、日本年金機構を通じて行う。
任意加入被保険者になることで、未納期間を埋めたり、受給資格を得ることができるよ。
国民年金と厚生年金の保険料
国民年金と厚生年金の保険料は、次のようになる。
- 第1号被保険者
国民年金保険料は、2025年の場合、月額17,510円になる。
世帯主や配偶者には、国民年金保険料を滞納した場合に一緒に支払う責任があるよ。- 第2号被保険者
厚生年金保険料に国民年金保険料も含まれるので、国民年金保険料を別途収める必要はない。
毎月の保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率
賞与の保険料 = 標準賞与額 × 保険料率
標準報酬月額や標準賞与額は、保険料計算の基礎になるもの。
標準報酬月額の上限は、2024年の場合、62万になる。2025年に75万円に引き上げられる予定だよ。
標準賞与額の上限は、7回の支払いにつき150万円になる。
保険料率は、2025年の場合、18.3%になる。
保険料は、事業主と従業員が半分ずつ負担する。
育児休業中と産休期間中の保険料は、子が3歳になるまで免除される。
- 第3号被保険者
-
保険料の負担はなしになる。
保険料の納付期限
保険料の納付期限は、原則として翌月末日までとなる。
例外として、口座振替の場合は翌月末日に引き落としで、前納の場合は6カ月前、1年前、2年前に納めることができる。
口座振替は銀行口座から保険料が引き落とされるもので、前納は保険料を期限前にまとめて支払うものになる。 口座振替や前納の場合、保険料の割引がある。
保険料を滞納した場合、現在では2年以内の分しか後から支払うことができない。
ただし、平成27年10月から平成30年9月までの3年間に限り、5年以内の分を支払うことができたよ。
保険料の免除と猶予
第1号被保険者について、保険料の納付が困難な人のために、保険料の免除と猶予の制度がある。
| 免除・猶予 | 対象者 | 詳細 |
|---|---|---|
| 法定免除 | 障害年金を受給している人や、生活保護法の生活扶助を受けている人になる。 | 届け出があれば保険料の全額が免除される。 |
| 申請免除 | 失業など経済的な理由で保険料を納付することが困難な人になる。 | 申請して認められた場合、保険料の全額、3/4、半額、1/4が免除される。 |
| 学生納付 特例制度 |
第1号被保険者で、本人の所得が一定以下の学生になる。 | 申請によって、保険料の納付が猶予される。 |
| 50歳未満納付 猶予制度 |
50歳未満の第1号被保険者で、本人と配偶者の所得が一定以下の人になる。 | 申請によって、保険料の納付が猶予される。 |
保険料の免除または猶予を受けた期間については、10年以内ならば追納をすることができる。
追納は、後からある期間の保険料を支払うこと。
公的年金の給付手続き
公的年金を受給するには、まず受有者が受給権があるかを国に確認する。これを裁定という。
その後、支給年齢到達日の3か月前に、日本年金機構から年金請求書が送付されるので、支給年齢到達日以降に、年金請求書を用いて手続きを行う。
手続き先は、加入していた年金制度によって異なるよ。
| 加入していた年金制度 | 手続先 |
|---|---|
| 国民年金のみ第1号被保険者として加入 | 住所地の市区町村役場 |
| 厚生年金のみ加入 | 最後の勤務先を管轄する年金事務所 |
| 厚生年金と国民年金に加入して、最後が厚生年金の場合 | 住所地を管轄する年金事務所 |
| 共済年金に加入 | 各共済組合 |
年金は、受給権が発生した月の翌月から、受給権が消滅した月まで支給される。
原則として、偶数月の各15日に、前月までの2か月分が支払われる。
共済年金は、公務員、地方自治体職員、私立学校職員を対象とした年金制度のこと。現在では、共済年金は廃止されて、厚生年金に統一されている。
ただし、過去に共済年金に加入していた期間については、その分が年金額に反映される。
老齢基礎年金
老齢基礎年金は、受給資格期間が10年以上の人が、65歳になった時から受け取ることができるもの。
受給資格期間と老齢基礎年金額は、それぞれ次の式で求めることができる。
受給資格期間 = 保険料納付済期間 + 保険料免除期間 + 合算対象期間
老齢基礎年金額 = 69,308円 × 改定率
69,308円は2025年の場合で、年度によって異なる。改定率も、年度によって異なるよ。
保険料免除期間は、第1号被保険者で保険料の納付を免除された期間のこと。
合算対象期間は、受給資格期間には反映されるけれど、実際の年金額には反映されない期間のこと。
満額の老齢基礎年金は、1円単位ではなく、50円単位で切り上げや切り捨てをする。
免除期間
免除期間がある場合、上記の金額より安くなる。
老齢基礎年金額 = ① + ②
①平成21年3月までの期間分
満期の年金額 ×(保険料納付済月数 + 全額免除月数 × 1/3 + 3/4免除月数 × 1/2 + 半額免除月数 × 2/3 + 1/4免除月数 × 5/6)÷ 480
②平成21年4月以降の期間分
満期の年金額 ×(保険料納付済月数 + 全額免除月数 × 1/2 + 3/4免除月数 × 1/2 + 半額免除月数 × 2/3 + 1/4免除月数 × 5/6)÷ 480
40年に12カ月を掛けた480で割り算をしている。
免除期間は、法定免除期間と申請免除期間になる。
合算対象期間、学生納付特例期間、50歳未満納付猶予期間は年金額に反映されないよ。
繰り上げ受給・繰り下げ受給
老齢基礎年金の受給開始年齢は65歳からだけれども、繰り上げ受給や繰り下げ受給をすることもできる。
繰り上げ受給は、60歳から64歳までのうちに、年金の受け取りを開始すること。繰り上げた月数に0.5%を掛けた額が減算される。
繰り下げ受給は、66歳から70歳までのうちに、年金の受け取りを開始すること。繰り下げた月数に0.7%を掛けた額が加算される。
付加年金
付加年金は、月額400円を国民年金保険料に上乗せして納付することにより、次の額を老齢基礎年金に加算できるもの。
付加年金 = 200円 × 付加年金保険料の納付期間
付加年金は、第1号被保険者のみの制度になる。
付加年金と、国民年金基金の併用はできない。
付加年金と、個人型確定拠出年金(iDeco)の併用はできる。
老齢厚生年金
老齢厚生年金は、60歳から64歳までの特別支給の老齢厚生年金と、65歳以上の老齢厚生年金がある。
特別支給の老齢厚生年金は、定額部分と報酬比例部分に分かれる。
定額部分は、加入期間に応じた金額のこと。
報酬比例部分は、在職時の報酬に比例した金額のこと。
老齢厚生年金の受給要件は、次のようになる。
| 特別支給の老齢厚生年金 | 老齢厚生年金 | |
|---|---|---|
| 支給内容 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 |
| 定額部分 | 経過的加算 | |
| 老齢基礎年金 | ||
| 受給開始年齢 | 60歳以上65歳未満 | 65歳以上 |
| 受給資格 | 老齢基礎年金の受給資格期間である10年以上を満たしていること | |
| 厚生年金の加入期間が1年以上 | 厚生年金の加入期間が1か月以上 | |
特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げ
特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、生年月日によって段階的に引き上げられ、最終的には65歳からの老齢厚生年金のみになる。
60歳から受給できていた年金が、最終的には65歳からの受給に統一されるよ。
支給開始年齢は男性と女性で異なり、女性は男性よりも5年遅れて引き上げられる。
| 性別 | 特別支給の老齢厚生年金 | 老齢厚生年金 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 男性 | 女性 | 60~61歳 | 61~62歳 | 62~63歳 | 63~64歳 | 64~65歳 | 65歳以降 |
| ~昭和16年4月1日生 | ~昭和21年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | ||||
| 定額部分 | 老齢基礎年金 | ||||||
| 昭和16年4月2日~昭和18年4月1日生 | 昭和21年4月2日~昭和23年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | ||||
| 定額部分 | 老齢基礎年金 | ||||||
| 昭和18年4月2日~昭和20年4月1日生 | 昭和23年4月2日~昭和25年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | ||||
| 定額部分 | 老齢基礎年金 | ||||||
| 昭和20年4月2日~昭和22年4月1日生 | 昭和25年4月2日~昭和27年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | ||||
| 定額部分 | 老齢基礎年金 | ||||||
| 昭和22年4月2日~昭和24年4月1日生 | 昭和27年4月2日~昭和29年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | ||||
| 定額部分 | 老齢基礎年金 | ||||||
| 昭和24年4月2日~昭和28年4月1日生 | 昭和29年4月2日~昭和33年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | ||||
| 老齢基礎年金 | 昭和28年4月2日~昭和30年4月1日生 | 昭和33年4月2日~昭和35年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | |||
| 老齢基礎年金 | |||||||
| 昭和30年4月2日~昭和32年4月1日生 | 昭和35年4月2日~昭和37年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | ||||
| 老齢基礎年金 | |||||||
| 昭和32年4月2日~昭和34年4月1日生 | 昭和37年4月2日~昭和39年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | ||||
| 老齢基礎年金 | |||||||
| 昭和34年4月2日~昭和36年4月1日生 | 昭和39年4月2日~昭和41年4月1日生 | 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | ||||
| 老齢基礎年金 | |||||||
| 昭和36年4月2日生~ | 昭和41年4月2日生~ | 老齢厚生年金 | |||||
| 老齢基礎年金 | |||||||
昭和60年の年金制度改正により、老齢厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられることになった。
しかし、いきなり65歳に引き上げると、60歳から受給を予定していた人に大きな影響が出てしまう。そのため、段階的に引き上げるために、特別支給の老齢厚生年金が設けられたよ。
特別支給の老齢厚生年金の特例
特別支給の老齢厚生年金は、生年月日に応じて支給開始年齢が引き上げられる。
しかし、次の要件に該当する人は、生年月日に関係なく、特別支給の老齢厚生年金が支払われるよ。
- 障害者の特例
-
- 厚生年金の被保険者期間が1年以上あること
- 現在、厚生年金の被保険者ではないこと
- 障害等級1級から3級に該当する障害があること
- 長期加入者の特例
-
- 現在、厚生年金の被保険者ではないこと
- 厚生年金の被保険者期間が44年以上あること
特別支給の老齢厚生年金の年金額
特別支給の老齢厚生年金について、報酬比例部分と定額部分の年金額は、次のように算出する。
報酬比例部分 = A + B
A = 平均標準報酬月額 × 7.125 ÷ 1000 × 平成15年3月以前の被保険者期間の月数
B = 平均標準報酬月額 × 5.481 ÷ 1000 × 平成15年4月以前の被保険者期間の月数
Aの平均標準報酬月額は、平成15年3月以前の厚生年金保険期間における平均月収額になる。
Bの平均標準報酬月額は、平成15年4月以前の厚生年金保険期間における平均月収額になる。これは賞与を含むよ。
定額部分 = 1,656円 × 被保険者期間の月数
被保険者期間の月数の上限は、480月となる。
65歳からの老齢厚生年金の年金額
65歳からは、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分が老齢厚生年金、定額部分が老齢基礎年金として支給される。
| 特別支給の老齢厚生年金 | 老齢厚生年金 | |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 65歳以上 | 詳細 |
| 報酬比例部分 | 老齢厚生年金 | 報酬比例部分の計算式と同じになる。 |
| 定額部分 | 経過的加算 | 当面の減少部分を補てんする。 |
| 老齢基礎年金 | 定額部分の計算式と異なり、被保険者期間に基づく。 | |
65歳からの老齢基礎年金は、定額部分よりも低い金額になる。
そのため、減少額を補てんするため経過的加算という調整が行われる。
経過的加算額 = A – B
A = 1,656円 × 被保険者期間の月数
B = 794,107円 × 昭和36年4月以降で20歳以上60歳未満の厚生年金の被保険者月数 ÷ 480月
老齢厚生年金の繰上げ受給・繰下げ受給
老齢厚生年金の受給開始年齢は、原則として65歳だけれども、繰上げ受給や繰下げ受給もできるよ。
繰上げ受給は、60歳から64歳までのうちに、年金の受け取りを開始すること。繰り上げた月数に0.5%を掛けた額が減算される。
繰下げ受給は、66歳から70歳までのうちに、年金の受け取りを開始すること。繰り下げた月数に0.7%を掛けた額が加算される。在職老齢年金で減額がある場合は、減額後の年金額に0.7%を掛ける。
繰上げ受給の年金減少率は最大30%、繰下げ受給の年金増加率は最大42%になる。
老齢厚生年金の繰上げは、老齢基礎年金の繰上げと同時に行わなければならない。
老齢厚生年金の繰下げは、老齢基礎年金の繰下げと別々に行うことができるよ。
老齢厚生年金の加給年金
加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上あり、その人によって生計を維持されている配偶者または子がいる場合に支給されるもの。年金の家族手当のようなものになる。
| 受給要件 | 受給額 | |
|---|---|---|
| 配偶者 | 65歳未満であること。 | 234,800円 |
| 子 | 18歳になって最初の3月31日まで、または障害等級が1、2級で20歳未満であること。 | 第1子と第2子は各234,800円、第3子以降は各78,300円 |
老齢厚生年金の受給権者が昭和9年4月2日以降生まれの場合は、配偶者の加給年金額に特別加算がある。特別加算額は、生年月日に応じて異なるよ。
加給年金は、配偶者が65歳に到達すると支給が停止される。その代わりに、配偶者の生年月日に応じた金額が、配偶者の老齢基礎年金に加算される。これを振替加算という。
例えば、昭和30年5月15日生まれの夫と、年下の妻がいるとする。妻が65歳になって、老齢基礎年金を受け取れるようになったら、夫の加給年金は加算されず、妻の年金に加算される。
在職老齢年金
在職老齢年金は、60歳以降も厚生年金の加入者として働く場合の老齢厚生年金のこと。
60歳以降に会社から受け取る給与の金額に応じて、老齢厚生年金の額が減額される。
減額される年金額は、年齢によって異なる。
基本月額 = 老齢厚生年金額 ÷ 12カ月
総報酬月額相当額 = その月の標準報酬月額 + その月以前1年間の標準賞与額 ÷ 12カ月
60歳~64歳
基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円以下の場合、全額が支給される。
基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超える場合、一部が支給停止になる。
65歳~69歳
基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円以下の場合、全額が支給される。
基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円を超える場合、51万円を超える額の半分が支給停止になる。
支給停止になるのは、老齢厚生年金の部分で、老齢基礎年金の部分は全額支給される。
70歳以上
65歳~69歳の場合と同じになる。
70歳以降は、在職中でも厚生年金の被保険者とならないので、年金保険料の負担はなくなる。
離婚時の年金分割
平成19年4月以降に離婚した場合、夫婦間の合意または裁判所の決定があれば、離婚期間中の夫婦の厚生年金の報酬比例部分を分割することができる。
分割割合は夫婦で決めることができるけれど、上限は半分までとなるよ。
平成20年5月以降に離婚した場合、夫婦間の合意がなくても、平成20年4月以降の第3号被保険者期間について、第2号被保険者の厚生年金の半分を分割することができる。
分割の請求期限は、離婚してから2年以内となる。
元配偶者から分割を受けた厚生年金の保険料納付記録に掛かる期間は、老齢基礎年金の受給資格期間に算入されない。
障害基礎年金・障害厚生年金
病気や怪我が原因で障害者となり、一定の要件を満たした場合、障害年金や障害手当金を受け取ることができる。
障害基礎年金
障害基礎年金は1級と2級があり、受給要件と年金額は次のようになる。
| 受給要件 | 初診日に国民年金の被保険者であること。または、国民年金の被保険者であった人で、60歳以上65歳未満で、国内に住んでいること。 |
| 保険料納付要件 | 原則:保険料納付済期間と保険料免除期間が全被保険者期間の2/3以上あること。 特例:初診日が平成38年4月1日前の場合、初診日のある月の前々月までの1年間において、保険料の滞納がないこと。ただし、初診日において65歳以上の人を除く。 |
| 年金額 | 1級:1,039,625円 × 1.25 + 子の加算額 2級:831,700円 + 子の加算額 子の加算額は、第1子と第2子は239,300円、第3子以降は79,800円になる。 |
| 20歳前の傷病による 障害基礎年金 |
初診日が20歳未満であった人が、障害認定日または20歳に達した日に、障害等級の1級または2級に該当するとき、障害基礎年金が支給される。
初診日から1年半以前に20歳になった場合は、障害認定日になる。 初診日から1年半以後に20歳になった場合は、20歳に達した日になる。 |
障害厚生年金
障害厚生年金は、1級、2級、3級、障害手当があり、受給要件と年金額は次のようになる。
| 受給要件 | 初診日に厚生年金の被保険者であること。または、障害認定日に障害等級1級、2級、3級に該当すること。 |
| 保険料納付要件 | 障害基礎年金の場合と同じになる。 |
| 年金額 | 1級:標準報酬月額 × 被保険者期間 × 報酬比例計算係数 × 1.25 + 配偶者加給年金額 2級:標準報酬月額 × 被保険者期間 × 報酬比例計算係数 + 配偶者加給年金額 3級:標準報酬月額 × 被保険者期間 × 報酬比例計算係数 |
| 障害手当金 | 標準報酬月額 × 被保険者期間 × 報酬比例計算係数 × 2 |
被保険者期間が300月に満たない場合、300月として計算する。
3級と障害手当金には、最低保証がある。
遺族給付
国民年金に加入している被保険者が死亡した場合、一定の要件を満たすと、遺族に遺族基礎年金が支給される。
| 受給要件 | ①国民年金の被保険者が死亡したとき ②国民年金の被保険者であった人で、国内に住所を有する、60歳以上65歳未満の人が死亡したとき ③老齢基礎年金の受給権者が死亡したとき ④老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている人が死亡したとき ①②の場合、保険料納付要件を満たしている必要がある。 ③④の場合、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合計した期間が25年以上ある人が対象になる。 |
| 保険料 納付要件 |
原則:死亡した月の前々月までに被保険者期間がある場合、その期間の保険料納付済期間と保険料免除期間が、全被保険者期間の2/3以上あること。 特例:死亡日が平成38年4月1日前の場合には、死亡月の前々月までの1年間において、保険料の滞納がないこと。ただし、死亡日に65歳以上の人を除く。 |
| 受給できる 遺族の範囲 |
死亡した人に生計を維持されていた、18歳になって最初の3月31日までの子、または18歳になって最初の3月31日までの子のある配偶者になる。
年収は850万円未満でなければならない。 |
| 年金額 | 831,700円 + 子の加算額
子の加算額は、第1子、第2子は各239,300円、第3子は79,800円になる。 |
寡婦年金・死亡一時金
国民年金の第1号被保険者の独自給付として、寡婦年金と死亡一時金がある。
寡婦年金と死亡一時金は、どちらか一方しか受け取ることができない。
寡婦年金
国民年金の第1号被保険者として、老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしている夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに死亡した場合、妻に支給される年金のこと。
寡婦年金を受給できるのは、夫と10年以上の婚姻期間があり、夫の死亡当時に65歳未満である妻になる。
寡婦年金の受給期間は、妻が60歳から65歳になるまでとなる。
妻が自分の老齢基礎年金を繰り上げ受給した場合、寡婦年金を受給することはできない。
平成29年8月から老齢基礎年金、老齢厚生年金、寡婦年金については、受給要件である受給資格期間が、25年以上から10年以上に短縮された。遺族基礎年金については変更がなく、25年以上のままになる。
死亡一時金
国民年金の第1号被保険者として保険料を滞納した期間が合計3年以上ある人が、年金を受け取らずに死亡して、遺族が遺族基礎年金を受け取ることができない場合に、一定の遺族に支給される年金のこと。
一定の遺族は、死亡した人と生計を共にしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹で遺族基礎年金を受給できない人になる。
遺族厚生年金
国民年金の第2号被保険者が死亡した場合で、一定の要件を満たしている時は、遺族は遺族基礎年金に遺族厚生年金を上乗せして受け取ることができる。
遺族厚生年金の受給要件は、次のようになる。
短期要件
- 厚生年金の被保険者が死亡したとき
- 厚生年金の被保険者期間中の傷病が原因で、初診の日から5年以内に死亡したとき
- 1級、2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
長期要件
- 保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合わせた期間が25年以上ある人で、老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たした人が死亡したとき
遺族厚生年金の計算の基礎になる被保険者月数については、短期要件は300月未満は300月とし、長期要件では実加入月で計算する。
給付乗数については、短期要件では生年月日による読み替えがなく、長期要件では生年月日による読み替えがある。
受給できる遺族の範囲は、死亡した人に生計を維持されていた妻、夫、子、父、母、孫、祖父、祖母になる。
子、孫の場合、18歳到達年度末まで、または障害等級1、2級で20歳未満であることが求められる。
夫、父、母、祖父、祖母の場合、55歳以上であることが求められる。年金を受給できるのは、60歳からとなる。
夫は遺族基礎年金の受給中に限って、遺族厚生年金も受給できる。
夫の死亡時に、30歳未満で子のない妻の遺族厚生年金の支給期間は5年間となる。
年金額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4相当額になる。
被保険者の加入月数が300月に満たないときは、300月で計算する。
中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算
遺族厚生年金について、一定の遺族には中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算という加算給付がある。
- 中高齢寡婦加算
夫の死亡時に、40歳以上60歳未満の子のない妻、または遺族基礎年金を失権している40歳以上60歳未満の子がある妻は、遺族厚生年金に584,500円が加算される。
妻が65歳になると支給が打ち切られるよ。
- 経過的寡婦加算
中高齢寡婦加算の打ち切りにより、年金が減少する分を補うための制度のこと。
例えば、会社員のAさんが死亡して、その時妻は50歳、子は10歳だった場合、次のようになる。
妻50~58歳
子10~18歳妻58~65歳
子18~25歳妻65歳~
子25歳~遺族厚生年金 遺族基礎年金 中高齢寡婦加算 経過的寡婦加算 老齢基礎年金 子が18歳になると、遺族基礎年金が打ち切られる。
妻が65歳になると、中高齢寡婦加算が打ち切られる。
中高齢寡婦加算について、長期要件に該当する場合、被保険者の加入期間が20年以上なければならない。
併給調整
併給調整は、1人が複数の年金受給者になる場合、いずれか1つの年金を選択しなければならなこと。
1人が複数の年金を受け取ることは、過剰給付になるため、原則1人1年金となる。
ただし、老齢基礎年金と老齢厚生年金など、同じ種類の基礎年金と厚生年金はともに受け取ることができる。
また、老齢基礎年金と遺族厚生年金の併給など、いくつかの例外もある。
| 老齢基礎年金 | 障害基礎年金 | 遺族基礎年金 | |
|---|---|---|---|
| 老齢厚生年金 | 〇 | △ | × |
| 障害厚生年金 | × | 〇 | × |
| 遺族厚生年金 | △ | △ | 〇 |
〇は同種のため、併給することができる。
△は例外として、65歳以上の場合に併給することができる。
×は併給することができない。
遺族厚生年金との併給調整
65歳以降の遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給については、次のように調整される。
併給調整後の遺族厚生年金額 = AかBのうち大きい額 – 本人の老齢厚生年金額
A = 遺族厚生年金
B = 遺族厚生年金 × 2/3 + 老齢厚生年金 × 1/2
例えば、妻のAさんは、数年前に夫に先立たれて、現在は遺族厚生年金を50万円受け取っているとする。
Aさんの老齢基礎年金は60万円で、老齢厚生年金は20万円になる。
併給調整後の遺族厚生年金額 = 50万円 – 20万円 = 30万円
A = 50万円
B = 50万円 × 2/3 + 20万円 × 1/2 = 33万円
Aさんが65歳になった時に受け取れる年金額 = 60万円 + 20万円 + 30万円 = 125万円
雇用保険との併給調整
老齢給付と雇用保険給付の両方が受給できる場合、次のように併給調整を行う。
- 特別支給の老齢厚生年金と雇用保険の基本手当
雇用保険の基本手当を受給している間は、特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止になる。 - 在職老齢年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付
在職老齢年金額が標準報酬月額に応じて減額する。