原則
損害保険は、次のような原則がある。
| 大数の法則 | 少数では偶然の影響が大きいが、大数では偶然の影響が小さいこと。
多くの契約者から保険料を集めることにより、偶然の影響を小さくして、安定した運営をすることができる。 |
| 収支相当の原則 | 契約者が払込む保険料と、保険会社が支払う保険金が等しくなること。
これにより、公平な運営をすることができる。 |
| レクシスの原則 | リスクの危険度に応じた保険料を負担しなければならないこと。給付・反対給付均等の原則ともいう。
同じ危険度の契約者が、同じ保険料を負担することにより、公平な運営をすることができる。 |
| 利得禁止の原則 | 実際に発生した損害以上の保険金を受け取ってはならないこと。
これにより、不当に利益を得る手段として利用されないようにすることができる。 |
保険金額と保険価格の関係
保険金額と保険価格の関係には、次のようなものがある。
- 超過保険:保険金額 > 保険価格
損害額は全額支払われる(実損てん補)。 - 全部保険:保険金額 = 保険価格
損害額は全額支払われる(実損てん補)。 - 一部保険:保険金額 < 保険価格
保険金額と保険価格の割合により保険金が削減される(比例てん補)。
実損てん補は、実際に被った損害額に基づいて保険金が支払われること。例えば、500万円の損害額の場合、500万円の保険金が支払われる。
比例てん補は、実際に被った損害額と保険金額に基づいて保険金が支払われること。例えば、500万円の損害額の場合、500万円以下の保険金が支払われることがある。
超過保険や全部保険の場合でも、利得禁止の原則により、保険価格を超えて保険金が支払われることはない。
分類
損害保険は、次のように分類することができる。
| モノ保険 | 建物や自動車など物に生じた損害を対象とする保険のこと。自動車保険や火災保険がこれに当たる。 |
| ヒト保険 | 人の怪我などを対象とする保険のこと。傷害保険がこれに当たる。 |
| 賠償責任保険 | 第三者に対する損害賠償責任を対象にする保険のこと。個人賠償責任保険や生産物賠償責任保険がこれに当たる。 |
| その他の保険 | 上記以外の損害を対象にする保険のこと。所得補償保険などがこれに当たる。 |
自動車保険
自動車保険は、自動車の運転中に起きた事故による損害を補償するもの。
強制加入の自動車保険と、任意加入の自動車保険に分かれる。
強制加入の自動車保険
強制加入の自動車保険には、自賠責保険がある。
自賠責保険は、全ての自動車の所有者・運転者が加入しなければならない保険のこと。加害者以外の損害を補償する。
事故の相手の運転手や通行者の怪我は補償の対象になる。
事故を起こした運転手の怪我は補償の対象外になる。
車の破損や建築物の損害は補償の対象外になる。
保険金の限度額は、死傷者1人当たり次のようになる。
- 死亡事故:3,000万円まで
- 傷害事故:120万円まで(後遺障害の場合は75万円~4,000万円まで)
任意加入の自動車保険
任意加入の自動車保険には、次のようなものがある。
| 対人賠償保険 | 事故で他人を死傷させ、損害賠償責任を負った場合に、自賠責保険の補償額を超える部分を補償する保険のこと。 |
| 対物賠償保険 | 事故で他人の物に損害を与えて、損害賠償責任を負う場合に備える保険のこと。 |
| 搭乗者傷害保険 | 事故を起こした運転手や同乗者の死傷を補償する保険のこと。 |
| 自損事故保険 | 自賠責保険で補償されない単独事故を補償する保険のこと。 |
| 無保険車傷害保険 | 事故により死傷したが、加害者が無保険の場合や、十分な補償ができない場合に補償する保険のこと。 |
| 車両保険 | 自動車が事故や盗難にあった場合に補償する保険のこと。 |
| 人身傷害補償保険 | 事故により死傷した場合、過失の有無に関わらず、実際の損害額を補償する保険のこと。 |
対人賠償保険や対物賠償保険は、被害者を救済するための保険になる。そのため、免許失効中や飲酒運転中の事故でも保険金が支払われるよ。
火災保険
火災保険は、火災による損害を補償するもの。住宅や家財が補償の対象になる。
火災保険の種類と補償の範囲は次のようになる。
| 損害 | 住宅火災保険 | 住宅総合保険 |
|---|---|---|
| 火災、落雷、爆発、破裂 風災、ひょう災、雪災 |
〇 | 〇 |
| 消防活動による水濡れ | 〇 | 〇 |
| 水害、水災 | × | 〇 |
| 給排水設備事故による水漏れ | × | 〇 |
| 盗難 | × | 〇 |
| 落下、飛来、衝突 | × | 〇 |
| 持出家財の損害 | × | 〇 |
| 地震、津波、噴火 | × | × |
| シロアリ被害 | × | × |
住宅火災保険は、火災、落雷、風災による損害を補償するもの。
住宅総合保険は、住宅火災保険で補償されるものに加えて、水災、盗難による損害を補償するもの。
住宅火災保険や住宅総合保険は掛捨型の火災保険になる。
長期総合保険や積立生活保険といった積立型の火災保険もある。
火災保険の保険金の支払額は次のようになる。
- 保険金額が保険価格の80%以上
実損てん補になり、保険金額を限度に実際の損害額が支払われる。 - 保険金額が保険価格の80%未満
比例てん補になり、次の式によって保険金が支払われる。
損害保険金 = 損害額 × 保険金額 ÷(保険価格 × 80%)
地震保険
地震保険は、地震、津波、噴火による損害を補償するもの。住宅や家財が補償の対象になる。
火災保険と地震保険はセットになっていることが基本のため、地震保険だけ加入することはできない。火災保険に加入する際、地震保険には加入しない場合には、その旨を届出る必要があるよ。
火災保険は、地震、津波、噴火にによる損害は補償の対象外になる。
地震保険は、1つが30万円を超える貴金属や宝石は補償の対象外になる。
- 保険料
地震保険の保険料は、所在地と建物の構造によって決まる。
東京などは保険料率が高く、鹿児島などは保険料率が低い。
全国統一の地震保険基準率に基づいて算定するため、同じ建物は異なる保険会社でも同じ保険料になる。
保険料の割引制度に、免震構造を持つ建物を割引する免震建築物割引、耐震診断で高い判定の建物を割引する耐震診断割引、耐震等級が建物を割引する耐震等級割引、新しい建物を割引する建築年割引がある。
- 保険金
-
地震保険の保険金は、次のように支払われる。
- 建物または家財が完全に壊れている(全部損):保険金額の100%
- 建物または家財が50%~70%壊れている(大半損):保険金額の60%
- 建物または家財が20%~50%壊れている(小半損):保険金額の30%
- 建物または家財が3%~20%壊れている(一部損):保険金額の5%
- 保険期間
地震保険の保険期間は、原則1年になる。
火災保険の保険期間が5年を超える場合、1年ごとの自動継続か、5年ごとの自動継続が選べるよ。
- 保険金額
-
地震保険の保険金額は、火災保険の30~50%の範囲で設定する。
ただし、建物は5,000万円まで、家財は1,000万円までになるよ。
傷害保険
傷害保険は、日常生活での様々な怪我を補償するもの。保険料は職業によって2段階に分かれる。
危険な職業についている人の方が怪我をしやすいので、職業によって保険料が変わるよ。
傷害保険には、次のような種類がある。
| 普通傷害保険 | 国内外を問わず、日常生活で起こる傷害を補償する。
業務中の傷害も対象になる。 病気、細菌性食中毒、自殺、地震、噴火、津波による傷害は対象外になる。 |
| 家族傷害保険 | 普通傷害保険と同じ内容で、家族全員を補償する。
家族の範囲は、本人、配偶者、生計を共にする同居親族、生計を共にする別居の未婚の子になる。 |
| 交通事故傷害保険 | 国内外を問わず、交通事故、建物や乗り物の火災、エスカレーターやエレベータの事故による傷害を補償する。 |
| ファミリー 交通事故傷害保険 |
交通事故傷害保険と同じ内容で、家族全員を補償する。
家族の範囲は、本人、配偶者、生計を共にする同居親族、生計を共にする別居の未婚の子になる。 |
| 国内旅行傷害保険 | 国内旅行中の傷害を補償する。
細菌性食中毒による傷害は対象になる。 地震による傷害は対象外になる。 |
| 海外旅行傷害保険 | 海外旅行中の傷害を補償する。
細菌性食中毒、地震、噴火、津波による傷害は対象になる。 |
賠償責任保険
賠償責任保険は、偶然の事故による損害賠償責任を補償するもの。
賠償責任保険には、次のような種類がある。
| 対象 | 保険 | 詳細 |
|---|---|---|
| 個人 | 個人 賠償責任保険 |
日常生活での事故によって、他人に怪我をさせたり、他人の物を壊したことにより、損害賠償責任を負うことに備えるもの。
業務中の損害賠償責任や、借りた物に対する損害賠償責任は対象外になる。 |
| 法人 | PL保険 | 製造・販売した商品の欠陥によって、他人に損害を与えたことにより、損害賠償責任を負うことに備えるもの。生産物賠償責任保険ともいう。
レストランの食事で食中毒を出した、端末が出火して火傷を負わせた場合など。 |
| 施設所有管理者 賠償責任保険 |
施設の不備による事故や、施設内外で業務中に発生した事故により損害賠償責任を負うことに備えるもの。 倉庫に積んであった荷物が崩れて、従業員に怪我を負わせた場合など。 |
|
| 請負業者 賠償責任保険 |
請負業務中に発生した事故により、損害賠償責任を負うことに備えるもの。
工事中に鉄板が落下して、通行人に怪我を負わせた場合など。 |
|
| 受託者 賠償責任保険 |
他人から預かった物の破損・紛失により、損害賠償責任を負うことに備えるもの。 |
その他の保険
その他にも、次のような損害保険があるよ。
| 対象 | 保険 | 詳細 |
|---|---|---|
| 個人 | 所得補償保険 | 病気や怪我により、働けなくなることに備えるもの。 |
| 法人 | 労働災害総合保険 | 労災保険の給付や労働災害により、損害賠償責任を負うことに備えるもの。 |
| 費用・利益保険 | 偶然の事故による企業活動の停止に備えるもの。 | |
| 機械保険 | 突発的な機械の事故による損害に備えるもの。 | |
| 建設工事保険 | 突発的な建物の事故による損害に備えるもの。 |
個人が地震保険料を払込んだとき
個人が地震保険料を払込んだとき、地震保険料控除として所得から控除することができる。
これにより、所得税や住民税の控除が受けられる。控除額は、次のようになるよ。
- 所得税:払込保険料の全額(50,000円まで)
- 住民税:払込保険料の半額(25,000円まで)
個人が保険金を受け取ったとき
損害保険の場合、実損払いのため原則は非課税となる。
ただし、保険金が損害額を超える場合、その超過分は課税の対象となるよ。
また、次のものは生命保険と同じ扱いになる。
- 傷害保険や自動車保険による死亡保険金:相続税や所得税の課税対象となる。
- 積立型保険の満期返戻金や解約返戻金:所得税(一時所得)として課税される。
- 年金として受け取る給付金:所得税(雑所得)として課税され、公的年金等控除が適用される。
公的年金等控除は、公的年金などを受け取る際、課税対象額を減らして、年金受給者の税負担を軽減するもの。
法人や個人事業主が保険料を払込んだとき
法人や個人事業主が保険料を払込んだとき、次のように経理処理される。

法人の場合
法人が払込んだ保険料は、原則として損金算入される。
ただし、満期返戻金がある契約の場合、積立部分に関する保険料は資産計上する。

個人事業主の場合
個人事業主が払込んだ保険料は、全額を経費として処理する。
店舗兼住宅の火災保険料のうち、住宅部分については経費とすることができない。
個人事業主本人の傷害保険の保険料や、所得補償保険の保険料は経費とすることができない。
法人が保険金を受け取ったとき
法人が保険金を受け取ったとき、原則として益金になり、法人税の課税対象になる。
保険料が資産計上されている場合、保険金からその分を差し引くことができる。これにより、益金が減少して法人税が軽減されるよ。
固定資産に損害が生じたため受け取った保険金を、新たな固定資産の取得に充てた場合、圧縮記帳を適用することができる。
圧縮記帳は、資産の購入費用を経費として計上することができるもの。これにより、法人税が軽減されるよ。